涸轍鮒魚
桃月の雑記帳・こてつふぎょ
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DATE: 2010/12/23(木)   CATEGORY: 十珠伝
十珠伝 第二輯第三十一回
  この記事は十珠伝の登場人物で書けなかった部分を紹介しています。また内容も十珠伝用に改変してありますが、南総里見八犬伝のネタバレともなりますので、自分で原作やマンガ版を読んでみたい方はご注意ください。





  時と所は変わって、下野国真壁郡。荒芽山の闘いから逃れてここへ流れ着いたのは菊地真でした。とは言っても真自身の意思でここへ来たのではなく、気がつくとたどり着いていたのです。その人里から離れた道端に一件の小さな店がありましたが、この店には弓矢や鉄砲が数多く並べられていました。真はこの場所について尋ねると共に、若干物々しいこの品揃えの理由を店の主人に尋ねました。店の主人・もず平の言うところには、なんとこの近くの山は賊だけでなく妖怪変化が現れるため、ここで旅人の護衛を引き受けているということです。真は少し興味をそそられましたが、それを見て取ったもず平は「あの山は人を狂わせてしまうから奥へ入っては駄目だ」と述べ、ある村の話を始めました。

  その村は妖怪変化の山とそれほど離れていないのですが、みな妖怪を恐れて山の奥に入ったことのある人は昔から誰もいませんでした。さて、その村には赤岩一角(あかいわ いっかく。イラスト:とろっぷP画)という郷士がおり、剣の道場の師範として非常に有名でした。赤岩一角あるとき一角は、自分がいくら武芸の腕を持っていても、村人たちを恐れさせている山へ入ったことすらないというのは名折れだといい、伴人を連れて山の奥へ入ることにしました。人々はみな一角を止めようとしましたが、彼の決心は固く、とうとう村の人達も止めかねて彼を行かせることにしました。

  一角は五、六人の伴人を連れて山に入りましたが、山の様子はみなの想像を遥かに超えた、険しく奇妙なものでした。山の最奥に近づいたころ、下が見えないほど深い谷が現れ、そこには長さ七丈(20数メートル)ほどの、苔が蒸した石橋がかかっていました。伴人たちはみな恐れ、なんとか一角を説得しようとしましたが、一角はそれを聞かず、みなを置いて石橋を渡って行ってしまいました。伴人たちはどうすることもできずにその場にとどまっていましたが、二刻(4時間)たっても一角が戻ってこないのを見て恐れ、話し合いを始めます。「このままではやがてみんな村に戻れなくなってしまう、今は村に戻って、みんなで一角様を探そう。」そう言うとみな逃げるようにして村へ戻りました。翌日話を聞いた人々はみなで山の中に入って行き、一角を探しましたが見つかりません。そしてとうとう石橋のところまで来てしまいましたが、やはりこの橋を渡ろうとする者は誰もいませんでした。するとそのとき、後ろから一行に声をかける者がありました。みなが振り返ると、なんと赤岩一角が立っていました。みなは大喜びで一角を迎え、村まで一緒に戻りました。一角は橋の向こうの様子をみなに伝え、実際に山の最奥へ行ったことを証明しました。
  この話はこれで終わったように思われましたが、一角の周りで次第に奇妙なことが起きるようになりました。一角には妻と娘がいましたが、妻が急死してしまったのです。そしてその後に娶った女性たちも、次々に失踪したり病死したりしてしまうのです。ただ小椿(こつばき)という女性が来てからはその現象もなくなり、小椿は一角の息子を出産しました。そうすると今度は一角自身の行動がおかしくなります。それまで目に入れても痛くないほど可愛がっていた一人娘を虐待するようになったのです。その虐待は日に日に酷さを増し、ついに見かねた親族の秋月家が娘を引き取ることになりました。それが今から十三年前の話。今では彼女も立派になり、文武両道に通じた才女として知られており、赤岩の里から離れた寂しい場所に一人住んでいるとのことです。

 「どんなに心身の強いものでも、あの山に入ればおかしくなってしまう。だから山の奥には決して入ってはならぬ。」もず平は真にそう言って聞かせました。真もそれを了解し、護身用に弓矢を買って先に進むことにしました。

  このあと真はどんな行動を取るのか、それはまた後の話。
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